日本情報経営学会誌は情報システム設計論特集

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これまでも日本情報経営学会(旧オフィスオートメーション学会)では情報シ
ステムは定期的に取り上げられてきたテーマだが、こうして情報システム設計
論を正面から取り上げたのは私の知る限り初めてではないだろうか。

いつになく興味深く読ませてもらったが、読後感は必ずしも満足のいくもので
はなかった。

というのも私が博士号をとったのはまさに情報システム設計、開発方法論の研
究だったからで、一度はこの分野の理論を極めたと思っている。同時に、現在
会社で日々おこなっているのも情報システム関係である。つまり、理論と現場
の両方をある程度のレベルで知っていると認識しているわけだ。

関西大学の古賀先生による導入文は持続的競争優位を獲得する方策は存在せず、
短期的競争優位を獲得し続けていく方が現実的と述べるが、私に言わせれば短
期と長期は相対的なものである。また組織コンテクストの重要性に言及しなが
らAcademic IS Fieldの意義を見いだそうとすることに私は容易に矛盾を感じ
得る。

またこの分野の権威の一人である中央大学の遠山教授は利用者と設計者を分け
ることの誤謬を指摘しているが論文の大半をサーベイに費やし、「ホワイトボー
ドは優れた情報システムとして機能している」などと記述した時点で私の興味
を失わせる。

そんな中ほとんど唯一Academic IS Fieldとして意義を見いだすのは東京工業
大学の飯島教授の論文である。形式的手法の背景と実応用を結び付けることは
数少ない理論と現実のリンク例として貴重である。しかし、飯島先生にとって
形式的手法はある種所与のものであり、なぜそれでなければならないのかとい
う動機に乏しい。言うまでもなく形式的手法に通じた実務家など皆無なのが現
実であり、<L, Cn>が形式システムであると言ってもその最初の入り口から
して極端に敷居の高いことを意識しなければ橋渡しをした先には誰もいないと
いったことになりかねない。

つまり私が博士論文を書こうと悪戦苦闘していた10年前とほとんど全く状況は
変わっていないのだ。それどころか実務の方はパッケージ化とオフショア開発
で完全に理論と決別しているため両者の溝は更に深まっているといえる。

そんな中なぜ私は実務に留まって理論を考察しているのか。誰一人として情報
システム設計理論を知らない部内で微分幾何をひもとくのか。学会は更に実務
と別の方向に進もうとしている。このままでは私の行く先には何があるのか不
安になる。

情報システム設計論じたいまだ若い学問である。多くの人が短期的競争優位を
求めている中、たとえそれが相対的なものだとしても私には根底を貫く長期的
な本質が見えてくると信じたい。


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