日本情報経営学会誌Vol.30 No.3から

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今回の特集は、「情報倫理」です。またそれ以外にAPCIM2009のBest Papersが
収録されています。

ここでは情報倫理に関する論文からいくつかを選んで考察します。

情報倫理、すなわちInformation Ethicsの研究は大きく2つの分野に広がって
展開されている。まず、ポリシーなきコンピュータ導入による産業構造への影
響を倫理的に制御しようとする考え方。次にいわゆるコンピュータウイルスに
代表されるコンピュータによる犯罪行為への対処である。いずれもコンピュー
タの普及に伴いその重要性を増している。

Simon Rogersonの論文は全体を概観するのに適している。彼は論文中で情報倫
理の歴史と数々の定義を引用しながらこのとらえどころのないテーマに形象を
与えようとしている。しかしその議論がプライバシーや知的財産に至ると論点
が発散し、個人的には範囲を広げすぎているとの印象を受ける。

その点、Chuck HuffとLaura Barnardによる論文は様々な研究者へのインタビュー
を通して情報倫理の今を捉えようとしていることが興味深い。そしてそこには
個人に依存する対策ばかりではなく基本的な規範の必要性への言及が明確に行
われている。今後のより深い考察が待たれる。

Andrew Adamsの論文ではソフトウェアのライセンスがオープンかクローズドか
でもたらされる結果の比較を試みている。それは議論の帰結としてデータ形式
がオープンかクローズドかに到達する。彼にとっての情報倫理はオープンソー
スソフトウェアが成立することと考えているのだろうか。

私は例えばコンピュータゲーム業界は産業としては成立しているものの、利用
者の時間と視力を奪っているという点で広い意味での情報倫理の観点からその
意義を再考すべきではないかと考えているのだが、いかがであろうか。

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